うな丼
俺は今Doしようか悩んでいる。
鰻丼の頭部分、つまり鰻が全て床に落ちてしまったのだ。
こんなことあるか?
鰻匹全部だぞ!今日俺は巷で話題の「鰻一枚丼」を食べに車を片道1時間飛ばして来たのだ。
その店は最近出来た店でSNSで取り上げられると一気に話題に。
テレビでも取材を受けるほどの人気ぶりで土日には長蛇の列が出来るほど。
見た目も豪華でほかほかご飯は有名な国産米を使用しており、タレも独自にブレンドしものを使っている。極め付けは鰻だ。今朝 市場に並んでいるものを元漁師の店主が選んで調理している。
お店はカウンターのみで9席座れる。
俺は店に着くと一番奥に案内された。
注文はSNSで話題の「鰻一枚丼」5,000円を注文。
店主が丁寧に1匹1匹丁寧に炭火で炙っていく。
カウンターからその光景を眺めるだけで幸せだ。
お腹の準備も満タン。
次々に他のお客さんに渡されていき漸く自分の前に丼が届く。
丼の蓋に手をかけ蓋を取ったと同時に鰻の蒲焼が1匹丸ごと蓋の裏に付いてきて、
あっと思った瞬間 蓋から鰻が離れ、俺の太ももの上で1度バウンドし床に落下。
そして今である。
どうしよう、いま落ちたばかりだから3秒ルールで大丈夫だと思う。
だがわざわざ落ちたものを拾って新鮮な気持ちで鰻丼が食べれるかと言われたら無理である。
お弁当の唐揚げとはまた話が別なのだ。
かと言って従業員の方に「鰻を落としてしまったので、もう1枚焼いてもらいますか」というのも気が引ける。
5,000円もする うな丼のアタマだぞ。
もしそうなった場合、プラス5,000円払わないといけないのだろうか?
そうなってしまったら10,000円払うことになる。
それは流石に出費がデカい。
明日からもやし生活になってしまう。
でも、このままタレご飯のみ食べて帰るのもな。タレご飯も美味しいけど、5,000円払ってタレご飯食べて1時間車で帰るのは嫌だな。
お店的にも鰻を床に落として仕方なくタレご飯だけ食べたお客さんから5,000円支払わせるのはいい気持ちがしないだろうな。
あ、気がついたら3秒以上経過していた。
床に落ちた鰻を救う手段は選択肢から消えてしまった。
残りは従業員の方にもう1枚注文するか、タレご飯を食べて帰るか。
ん?店主が皿に乗った1枚の鰻の蒲焼を俺の前に置いてくれた。
店主「これ、どうぞ。落ちたのはすぐに片付けるんで、ごゆっくり食べてください」
うおぉぉ、店主神!
初めは職人気質の渋めのおっちゃんと思ってたけど笑顔素敵。
俺抱かれてもいい。本当にありがとうございます。
俺は店主にお礼を言い、鰻を丼の上に乗せて改めて念願の鰻を一口。
なんだこれはなんという美味しさ。ふっくらとした鰻に甘いタレが合わさり、口の中で程よい炭の香りが広がる。
今まで食べた鰻の中で一番美味しい。
ご飯も程よい硬さで本当に最高のうな丼だ。
知らぬ間に床に落ちた鰻は片付けられており、そこにも感動をした
あっという間に完食しお会計。
故意に落ちしたわけではなかったので1杯分のお会計で済み。
改めて店主にご馳走様と伝えて店を出た。
帰りの車では余韻に浸っていた。
うまい飯 店主の腕と優しさ 従業員の接客。
本当に人気な理由がわかった。
はぁ。明日からも頑張ろう!
完


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